在来農法

 天日乾燥、布取り、完熟手摘み、樹上乾燥が、在来農法の具体策である。この方法は、現在機械乾燥、機械取り、一斉手摘みにとって代わり、作業の簡素化、合理化として行われてきている。

 天日乾燥、樹上乾燥

 収穫時に、約50%あった水分含有量は、輸出規格の13%〜14%(国によって異なる)にまで下げられる。その間に雨などの外的要因による、品質の劣化がないように水分量の調整をするが、現在のBRAZILで一般的に行われている作業は、

 1.収穫後即2日〜3日ほど天日乾燥させる。
 2.約40℃〜50℃の機械乾燥機で約48時間乾燥させる。(この工程までで16%に下げる)

 3.その後調整にかかり13.5%にする。

このように、最短では1週間ほどで製品化することが可能である。
しかし、在来農法(天日乾燥)によって仕上げる場合には、下記の工程がかかることになる。

完  熟
3日間の天日乾燥後、別の乾燥場に移し16%にまで下げる。その後、再度20日間の天日乾燥にかけ調整をする。

(計 約一ヶ月間の天日乾燥)

BOIA
樹上にて赤実の状態から完全に製品化するのに更に60日間樹上にて乾燥させる。収穫後、2日〜3日間天日乾燥させ、最終調整をする( CERRADO : 3.8億本/14万h保有 )


一方、COLOMBIAの場合には、

 1. 収穫後ウェットミルで果肉除去をし、パーチメントの状態にする。
 2. その後、ドライミルに移され天日乾燥で数日間乾燥工程に入る。
 3. 約45℃の機械乾燥で8時間乾燥させる。
  (FNCの推奨品/デス・ムシナヒナドールを使用すれば、もっと短期間に仕上がる。)
しかし、在来農法(天日乾燥)によって仕上げる場合には、ウェットミル後約45日〜60日間天日乾燥にて仕上る。
(COLOMBIAは、BRAILに比べて標高が高く、乾燥には時間がかかる。しかし、果肉の除去をする工程があるために比較的時間は少なくて済む。)このように短期間によって製品化された豆には、どのような利点が出てくるのかと言えば、

1.乾燥期間、雨などによるダメージが起こりにくく品質の劣化を防ぐことができる。
2.製品コストの安定化(ランニングコストの安定化)により経営戦略が組みやすくなる。
 (一般的に機械を使用すると機械の減価償却などによるランニングコストは上がるが、生産コストは下降する。)
3.早急な製品化によって、売りのタイミング期間の延長が可能となる。

 現在、100%天日乾燥を行っていると思われる国は、ETHIOPIA、VIETNAM、YEMEN等である。これらの国は、その年の天候状況によって大きく品質が変わってくるというデメリットが付いてくる。

機械乾燥と天日乾燥の品質の差


 天日と機械の大きな違いは、豆の組織に与える影響力の違いとされている。コーヒー豆は、植物学上<コーヒーノキ>の種子であり、一定時間以下の急速な乾燥には豆が耐えたれなくなってしまう構造をもっている。機械による乾燥は、種子内部の水分と与えられた熱の作用によって加水分解が起こり、組織がもろくなってしまう傾向にある。収穫された豆を機械乾燥と天日乾燥に分けると、天日乾燥の物の方が実自身は締まりが強くなり、味に関しては、酸味はシャープに打ち出され、甘味も多くなる傾向にある。(一方機械乾燥は、酸味に濁りが生じやすく、甘味は少なくなる。)

布取り、完熟手摘み

 収穫時のコーヒー豆は水分量が約50%あり、何らかの原因で豆が落ちると土などが付着することになる。長期間そのままで置かれていた豆などは、夜露にあたり、結果として醗酵した豆などになってしまうことがある。現在の機械取りでは、人間の約100倍の処理能力があるといわれているが、取りそこなった豆は、早急に人間の手によって拾われることが必要である。広大な農園に関して言えば、機械と人間の処理能力の把握が必要となり、そのコントロールを経営陣サイドによって細かく明文化されている。しかしながら落ちた豆を完全に拾うことができるかといえば、100%には到達していないと感じるのが消費国での一般論であると思われる。またBRAZILでは、一年に3回〜4回の開花がある。(7回以上開花した年もあり、エリアによって異なる。)開花があるということは、成長に差が生じるということであり、通常開花後7ヶ月〜8ヶ月で収穫できる赤実になるが、開花が一ヶ月以上もずれれば、木の中で青実(ベルジと呼ばれ渋みの残る味を持つ。)、赤実、それに加えBOIA(樹上乾燥した黒くなった豆)に向かった豆との3色が存在することになる。収穫機は、極端に若い青実を収穫することはないものの、多少赤実に近付いた青実は収穫することになる。

収穫機の原理は、横向きのポールがコーヒーの木を揺らすことによって、実を叩き落し、下で受け取る方式をとっている。ポールの回転速度によって収穫する豆(青実、赤実、BOIA)の選択は可能であるが、完全に分けることは不可能である。収穫機の稼動可能なエリアは、平らな地面に植えられた農園のみで、使用が一般化されているのは、CERRADOが中心である。また、収穫機の重量が4t〜5tと重く、コーヒーのように根が広範囲に張り巡らされる植物には、栄養分の吸収率が下がる傾向もある。

青実などの若い豆は、木にしっかりと付いているが、成長が進むにつれて木から外れやすくなる。

このようにばらつきをもって収穫された豆は、製品化の過程でも品質の安定化は難しくなり、カップテストの段階においては、土臭(土が付着すれば)、醗酵(土に落ちて夜露にあたった場合)、渋み、汚れの味が生じやすくなり、特にカップごとのばらつきが目立つようになる。(安定性がない。)そのために、木の下に布を敷いて、人間の手で完熟した豆を収獲するということが品質の安定化、カップテストの良品化につながると考えられている。
 もう一つ付け加えるとすれば、人間の手による場合、農園従事者の教育をどのようにするかという点である。実際には、収穫した豆の量によって給料を支払うという国がほとんどであり、彼ら(農園従事者)は、コーヒーの豆の色を区別せずに収穫するということがたびたび起こってしまう。また農園は、一斉に収穫したとしても青実を残せば、再度収穫をしなおす必要があり多額の経費がかかるという点から、一時期に収穫することも起こってしまう。これを防ぐには、農園とバイヤーとの話し合いしか解決策がなくなってしまう。
 産地の多くはラテン系民族であり、我々日本人の考える常識は通用しないことも多い。しかし彼らの良い点は、アミーゴ(友達)の精神に通じていることでもある。アミーゴのためなら…と無理も利いてくれるし、努力をしてくれることも我々にとっても大きな支えとなっている。我々の欲しい品質と、彼らの作れる品質の接点を求め、その製品のランク(各付け)を見出すことが品質の安定化につながると我々は考えている。

 良質の産地では、どの農園においても高品質の豆が生産されるかといえば、そうではない。(気候条件、地質が一定と仮定)農園の考え、品質管理方法、それにバイヤーのスペックをどこまで聞き入れてくれるかという柔軟性の度合いによって出来上がる品質は大きく変わってくる。そのため毎年同一の品質が生産される為には、どのような点に注意して欲しいかを細かくリクエストしておかなければ、バイヤーの希望品質とは違ったものが出来上がってくることになる。

 BRAZILなどはコーヒー先進国でありプライドも高い、そのために彼らの良品と感じているものを積極的に売ってくる傾向がある。しかし日本人には、なかなか受け入れられない味の豆もあり、生産国サイドにその差(日本が望む味とブラジル人の好む味)を感じてもらうことは大変難しい。一つの商品を輸入するためには、2年以上もかかる。その間、品質の打ち合わせでお互いの納得のいく味に仕上げるのは大変な作業である。ただ、思った味の商品が日本に来たときなどは、その2年の自分の思い(それまでは片思いだが)が通じたのかと心から喜べる一瞬となる。これは!と思える豆は年々少なくなり、個人的な片思いは思い出へと消えていってしまう。グルメコーヒーは長い歳月と多くの人の思いと、農園の歴史によって作られ、一瞬の感動と共に人々に喜ばれるべきものと思っている。

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