イエメン共和国(Republic of Yemen)

国土:面積55.5万ku(日本の1.5倍弱)
人口:2,385万人(2012年/世銀)
首都:サナア(人口 175万人)
元首:アブドラッボ・マンスール・ハーディ大統領
通貨:イエメン・リアル(1ドル=214.891リアル) 2014年6月10日現在

地勢:
下記4つの自然地帯から成っています。

  • 紅海に沿った西海岸地帯
  • 高原地帯
  • 中高地帯(海抜2,300mの首都サナアがあります)
  • 東部砂漠、丘陵地帯(歴史の都マーリブがあります。)

    
気候:
熱帯気候の北域に位置し、目立った雨期が4〜5月と7〜9月にあります。1年を通じ首都サナアでは温和であるが、 12〜1月は涼しくなります。

シバの女王の国

 「シバの女王」の治めていた国、それがイエメンです。

 富と美貌と英知で広く知られていた彼女の名は「バルキース」。彼女の国であるシバ王国は、紀元前10世紀頃から紀元前115年までのあいだ南アラビア一帯を断続的に支配していました。当時の南アラビアは、インド・中国と地中海世界を結ぶ「海のシルクロード」(別名「香料の道」)の最後の陸上部分に当たっており、シバ王国はこの交易ルートを押さえることで莫大な富を得ることが出来たのです。またシバの女王の勢力は対岸のエチオピアにも及び、彼女の産んだ子が後のエチオピア皇帝家の始祖となった、とも伝えられています。

幸福のアラビア

 アラビア半島の南部に位置するイエメンは、国土の約7割を山岳地が占める「砂漠ではないアラビア」の国です。西は紅海、南はインド洋に面しているため、海からの風が山にさえぎられて雨をもたらし、この雨が山岳地にさまざまな農作物を育みます。イエメンの山々の多くは乾季には岩だらけで褐色の山肌を見せますが、雨季には山全体が緑のベールをかぶります。古代ローマの人々は緑したたるこの国を見て、天に祝福された「幸福のアラビア」と呼びました。また南アラビアはアラブ発祥の地であり、多くのアラブ人にとってイエメンは「心の故郷」とされています。

緑の財産

 イエメンには一年中水が流れるような河川は一つもありません。そこで貴重な雨水を無駄なく利用するために、3000mにものぼる険しい山々の麓から頂上まで、まるで天に至る階段のように段々畑が積み上げられているのです。この段々畑で人々は主食となるキビ・アワ・ヒエ等に加えコーヒーを作り、僅かな平地では豆・胡椒・ジャガイモ等を育てています。山岳地から紅海へ下る道路沿いにはワディ(涸れ谷)があってバナナやパパイヤが生い茂り、紅海沿岸の砂漠平野では綿花・スイカが栽培され、またオアシスにはナツメ椰子の木がそびえています。山岳地でも砂漠でも「緑」は親から子へ、子から孫へと数千年来引き継がれてきたイエメンの何よりも貴重な財産なのです。

くつろぎ先進国

 「幸福のアラビア」と呼ばれたのは豊かな緑のためだけではありません。古来よりイエメンの人々は自由と独立を尊び、愛するもののためには果敢に戦うことで知られていました。イスラム帝国の拡張期に先兵となり活躍したのもイエメン人でした。

 初対面の人には寡黙で警戒の表情を見せることが多いイエメン人ですが、ひとたびうちとけ、マフラージ(居間)に座って家族や仲間内のくつろぎの場に入ってしまえば、富や地位のあるなしにわけへだてなく、また時間の経過にもこだわらない自由な時間を共有することができます。物質的には決して豊かではないイエメンですが、「くつろぎ」の豊かさにちょっと自信があります。

ブドウと庭

 ブドウの原産地は西アジア一帯に分布しており、イエメンでも古くからブドウが栽培されていました。紀元前10世紀頃の南アラビアの碑文には、王国の富の象徴として牛の頭とともに、必ずブドウの葉と実が彫り込まれています。日射しが強く、昼と夜の温度差の激しい山岳地帯の盆地の気候は、実のしまった甘味のあるブドウの生育に適しており現在でも首都サナアの周辺ではブドウの栽培が盛んです。またイエメンの都市では塀で仕切られた家の敷地の中に中庭が必ずあり、ここに噴水とブドウ棚を作り、その庭を眺めながらくつろぐことが出世の証とされています。ただしイエメンはイスラム教国ですから干しブドウは作りますがワインは作りません。

モカコーヒー
 コーヒーの原産地はエチオピアとされていますが、もともとは薬用に用いられていたということです。今日のような飲み物としてのコーヒーが登場したのは15世紀中頃のイエメンで、初めは宗教的な修行の場で眠気覚ましとして用いられていましたが、次第にくつろぎの場、おしゃべりの場に欠かす事の出来ないものとして中東地帯一帯に広まりました。これに応じてイエメン山岳地でのコーヒー生産が盛んになり、「モカ」コーヒーはイエメンの代表的輸出品となりました。イエメン人はそのほとんどを輸出に回してしまうため、特別な場合を除いてコーヒー「ブン(Bun)」は飲まず、替わりにコーヒー豆の殻を煎じた「キシル(Qishr)」を日常的な飲み物としています。したがって、イエメンでコーヒー「カフア(Qahwah)」を注文するとキシルがでてきます。もしあなたがモカコーヒーを飲みたければブンを注文してください。ブンとは、アラブ語でコーヒーを意味するからです。(因みに、04/05年度生産量予想は約5万袋、国内消費量は1万袋、輸出量は4万袋です。) 

*キシル/ギシル(Qishr):
脱穀したコーヒーの殻を焼き、煮出した飲み物(カフア・アル・キシル)。砂糖とジンジャー、シナモン、カルダモン等、家庭ごとに調合した香辛料を加える。昔はサルタン・コーヒー(回教国君主)と言われていました。
*ブ ン(Bun):
日本でいうコーヒー。濃く焼き、煮出した飲み物(カフア・アル・ブン)。ドリップ・コーヒーではありません。
[資料協力:小平 恵一郎様、佐藤 寛様]
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